パンとお皿

多分パンにも皿にも特に言及しません

20190223

朝。ハムチーズトースト。

昼。富士そばの煮干しラーメン。

夜。カレー。

 

不動産屋へ行き、住宅ローンの申請書を提出する。不動産屋が推薦する、実際に、審査が通った金融機関のうち一番金利が低い所にお願いする事にしたのだが、書類を書き終えた時点で、「あー、すみません。お伝えしなくちゃいけない事が頭から抜けてました。この金融機関だと、お客様が希望されている条件を一つだけ満たせないんでした」と言われてしまい、頑張ればどうにか調整できる条件だったので譲歩した。あの不動産屋、「頭から抜けてた」だなんて方便で、最初からこちらに譲歩させて提携期間と契約させるつもりで、申請書を書き終えるのを待っていたんだろうなとは思う。

 

不動産屋の担当の方は、表面上は丁寧に対応して下さるのだが、何かを説明するとき、例えば「この物件の場合、東京都が定める景観に関する条例に沿って、外壁の塗装や形状に配慮しなくちゃいけないんですよ。この条例に関して話題になった出来事がありまして、それが」とまで言葉を繋げた所で、変な間を置いて、こちらに「ああ、楳図かずお」と言わせる、ちょっとしたクイズみたいな問答を事あるごとに発生させようとする。きっと、客の知識量などを見極めながら、正答できるレベルのミニクイズを商談の随所に散りばめて、それらに正解させる事で客の自尊心をくすぐるテクニックを弄しているのだろう、と面倒くさく思いつつ、一応、今までのところクイズにはほぼ全問正解している。一度、金利に関する問題で間違えた。

 

 

不動産屋を出たその足で立川へ向かい、映画を観る。

 

女王陛下のお気に入り』。優雅で上品な映画なのだろうかと想像しながら足を運んだら、優雅ではあるが、そこそこ下品な映画だった。下品で下世話な欲望を満たすために手段を択ばない人々の揉め事を。美麗な宮殿やドレスといった意趣で鮮やかに飾り立てながら、優雅に堂々と物語る太々しい語り口が楽しい。心身共にボロボロな狂気の淵に立つ王女を演じるオリヴィア・コールマン、可憐な要望の中に底知れぬ狡猾さを漲らせた侍女を演じるエマ・ストーン、そのエマ・ストーンと対立する事になる気高く美しく執念深い公爵夫人を演じるレイチェル・ワイズ。この主演女優三人の演技がとにかく見事。相当ドロドロとした話なのに、不思議と、過剰な湿気を伴わなずに軽い口当たりが維持されていたのは、彼女たちの演技の塩梅によってもたらされるものが大きかったように思う。

 

続けざまに、『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督の新作『ビール・ストリートの恋人たち』。まず、邦題が良くない。 "If Beale Street Could Talk" という原題であればこの物語の展開にうってつけのビターなニュアンスをもたらしてくれるのだけれど、この邦題ではそのニュアンスが損なわれてしまう。ただ、大きな不満点はそれぐらいで、静かな怒りと哀しみと愛と絶望と希望を、深く、力強く、誠実にファイルに刻み込むことで、そのフィルムの力で、世界に立ち向かおうとする気概に満ち溢れた、高潔な作品だった。世界にはびこる不条理で残酷な状況に踏みつぶされないために、崖っぷちで踏ん張り続ける恋人たち、家族たちのストラグルは、決して順調には進まない。そのもどかしさや遣り切れなさを描き切る事で、観客の心に重たい置き土産を預けていくような作品。後味は決して良くないけれど、『ムーンライト』同様に、作品全体を凛とした矜持のようなものが支える美しい映画だった。